ポゼッション

 いつの間にかカウンターのチームはほとんど姿を消した。オランダがブラジルに勝てたのはまあ偶然じゃないかという気もしないでもないが、結果的に見れば戦術としてのカウンターはやはり脆弱だったのだろう。

 サッカーにおいて点数が入るパターンは大別すると3種類あって

  • カウンター
  • 相手のミス
  • 偶然(含むセットプレイ)

 このうち計算できるのはカウンターだけだ。カウンターは、相手が攻めこんでくれた場合に限り、タイミングよくボールを奪取して素早く攻撃すれば得点を決めることが出来る。

 ポゼッションは、カウンターを捨てる代わりに、プレッシャーをかけて相手のミスを誘い、セットプレイの回数を増やして何回かに一回はどうしても生まれるセットプレイからのゴールの確率を上げる。あいまいな確率に基づく戦術であり、ずっと攻めてるのに全然点が入らない、あまつさえカウンターで失点する、ということもある。

 それでも守ってカウンターよりチャンスは多い。カウンターも結局相手が攻めてくれない限り得点が奪えない、相手次第の戦術だからだろう。ポゼッション側は相手のカウンターの鋭さをよく見て攻めの具合を加減し、またスタミナを消耗して運動量を増やすことでカウンターを出掛かりで止める、パスを繋げさせないということも出来る。ポゼッションは疲れるのだけれども、その代わりに相手をコントロールすることができる。カウンター側はゴール前に集まってガチガチにスペースを消してしまえばたいして動かなくても相手の攻撃はほぼ防ぐことができ、一方的に相手を疲れさせる事も出来るが、ゴール前に人数をかけさせることにより、適当な放り込みからのパワープレイで、偶然得点を奪われる可能性も高めることになる。日本のように身長のないチームでは厳しい。けれども、ゴール前に人数をかけているということはカウンターのチャンスにもなる。守ってカウンターという戦術にもまた運の要素がつきまとっている。

 大事なことは、サッカーは自分のチームの力だけで点数を決められるようなスポーツじゃないということだ。サッカーがきちんと崩して攻撃できれば得点が決まるようなものなら、1分に1回でも3分に1回でも点が入るようなスポーツになっていたはずだ。いつ点が入るか全くわからない、どんなに強くても1点も取れず偶然に入った1点で負けることもある、それがサッカーの現実だ。

 しかし負けている局面では計算は通用しない。どうしても点を取らなければならず、前がかりになり、ポゼッションのために体力を消耗する。勝っている側はガチガチに固めてスタミナの消耗を抑えて、カウンターを決めてやればいい。イングランド、アルゼンチンをレイプしたドイツのように。

 ガチガチに守ってカウンターという戦術、これは結局、ボール奪取を重視しないためにリスクを侵さずにポゼッションすることを可能とし、カウンターによる攻撃のチャンスの目も摘んでしまう。ポゼッションを難しくさせる積極的なプレスと合わさらなければ得点を奪うのは難しい。得点を奪ったらガチガチに守ってカウンター、結局ブラジルやドイツのやり方が、きちんと出来たなら一番強いのだろうと思う。なぜブラジルはオランダに負けてしまったのだろう。