最も高い跳躍

 海のそばからジャンプ。

 波間に照り返す緑は砂と海が混じり合って出来ている。砂は海に飲まれ、緑に輝く。

 砂浜は霞んでいく。目の前を雲が通りすぎていく。

 沖ではおもちゃみたいな白い船が海にラインを引いている。塩水とバクテリアなどの雑多な混合物が、暗闇に届く前の光を反射したその深い青は、照り返す緑と混じりあってなだらかな階調を作っている。

 大気を切り裂いて高く飛ぶ。風は体中の血液を冷やし体温を奪い去る。緑から青へのグラデーションはやがて海と陸の境界の緑となり、境界が薄まり海と陸の二つに分かれ、中間を認識できなくなくなってしまう。

 極端に薄くなった大気が静かにあたりを漂っている。周辺が真空に限り無く近づいていき、地面からも離れ、どことも何ともつながっていない中で、重力さえ振り切って投げ出されていく。大気圧によって抑えつけられていた体中の液体が穴という穴から浸潤し、皮膚を破って拡散し始める。自分という柔らかい身体は境界を失って空間と溶け合い、跳躍という現象は存在を離れ、誰にも認識されないままどこまでも高く続いていく。