どうも逆なんじゃないか。

 言葉は万物を統べている。この世の実態は言葉の方にある。

 コンピュータはビット列を扱う。プログラミング言語は、ビット列に意味を与える。ただの4バイトのデータに、人は様々な名前をつける。名前を付けられた4バイトは、その名前が象徴する役割を果たす。

 しかし4バイトは4バイトだ。実態はビット列にあり、名前はそれを識別するだけだ。

 現実の事物は、認識しない限り存在しているとは言えない。存在と認識は不可分だ。この世の実態は認識の方にあるとも言える。人は現実に存在するリンゴを識別するためにリンゴという名をつけたのではなく、リンゴと名づけたからそこにリンゴは存在できる。それがまったく認識できないものであったならば、それは現実に存在していないとしか言いようが無い。