妊婦のたらい回しについて

 妊婦は脳内出血していた。町医者は「妊婦が突き刺さるような頭痛を感じている」ということを大病院に伝えたがどこの大病院も受け入れてくれなかった。しかし一介の産婦人科の町医者に脳内出血は手に余る。結局手遅れになった段階で妊婦は大病院に受け入れられ帝王切開で子供は助かり妊婦は死亡した。もともと手遅れだったのかもしれないが。

 あとで大病院は「脳内出血と聞いていたら受け入れていた」といったが町医者は「突き刺さるような頭痛を感じていることは伝えた」とし言った言わないの話になった。これはどっちも嘘は言っていないのだろう。産婦人科の町医者に脳内出血だという確信を持った判断は出来ないだろうし、救急車からの電話に出た受付が突き刺さるような頭痛と聞いて脳内出血と判断し担当医に伝えるのも難度が高そうだ。担当医が忙しかったら詳しい症状を言わず事務的に受け入れを拒否するのもまあ正当なことだろう。

 緊急レベルが高いと判断された場合に、無理やりにでも収容させる仕組みがまず必要だ。あとは救急車乗務員の緊急レベルの判断の的確さと、緊急性の判断が付かない場合に一旦収容し専門医が判断するシステムがあればいい。判断するべき人間がまとめて判断するシステムがあれば必ずしも正確なコミュニケーションは必要ない。正確なコミュニケーションが必要なシステムというのは既に破綻しているんだ。同一の国家資格を通っているといっても救急車の乗務員と町医者と大病院の受付と専門医の間じゃ使ってる用語もまるで違うだろうし。