括弧

 人間にとって括弧でくくることはとても負担の大きいことだ。青森県に吉田がいるとする。これを表現する時に、吉 青森県 田と表現しなきゃならないとしたらどうだ。書くのにも読むのにも負担がかかる。吉まで買いて、後で田を書かなきゃいけないことを覚えておき、県名を書き込んだ後に田で閉じることを思い出さなきゃいけない。

 しかしこの程度の関係性ならば括弧を用いるプログラミング言語でも混乱なく書ける。たとえば青森県(吉田)こんなふうにだ。だがなんにせよ括弧で閉じることは覚えておかなくてはいけない。括弧が二重ぐらいまでならどうにか分かるが、三重になると俺にはもはや把握できない。

 考え方を変えなきゃいけない。青森県.にいる.吉田。こうだ。パイプラインパターンには希望がある。括弧だらけの世界から僕らを救い出してくれる希望がだ。今は青森県.にいる(吉田)こうだ。これなら別に問題ないんだが、青森県にいるリンゴ農家の吉田さんとなると、青森県.にいる(吉田.仕事(農家.種類(リンゴ)))こんな風になる。そろそろ読めない。

 青森県.にいる.リンゴ.農家.の.吉田。こう書けるべきだ。.は推測してもらって、青森県にいるリンゴ農家の吉田。こう書けるべきだ。