モバイト

 日通いいよ日通。

 朝の体操の難度が微妙に高いのがちょっとアレだが、勤めてるのがいい人ばっかりで、気持ちよく仕事が出来る。荷物にラップを巻くのもだいぶ上手くなった。

 キレてくる人がいないのが大きい。いろんなとこいってると、たまに理由なくキレる奴の下につくことがある。脳がどっか壊れてるんだと思うけど、モバイトは基本的に社会の底辺を這いずり回り、一山いくらで使い捨てられる男達が人の足りない現場に次々と送り出されていく世界だ。

 ヤマト運輸はひどかった。仕事を何一つ教えてくれず、聞くと小さい声でぼそぼそと何か言い、聞き返すとキレる。そういうやつと当たってしまった。そういうやつがキレられる対象というのは多分モバイターぐらいだ。自分の人格の壊れっぷり故に底辺の仕事しかできない人が、もっと底辺のやつにキレている。

 モバイターでそういう人と会ったことはない。なんか日本語のはっきりしない外国人とか、日本語のはっきりしない日本人とか、そういう人はいるけど、おおむねいい人ばっかりだ。基本的に、仕事のことで怒り出せるほど仕事に情熱も責任も感じていないし、怒ったり怒られたりするほど人との繋がりを作りたいとも思っていない。今日会って、多分もう二度と会わない人に対して、社会の底辺同士のシンパシーを感じながらその場限りの仕事上での関係性を保つだけ、といった感じだ。

 佐川急便の仕事を紹介されたことはないけど、一回佐川急便に行ってみたい。ヤマト以上の地獄という噂だ。

 社員を採用する面接で、「で、君は借金はいくらなの?」と聞かれるそうだ。借金がないと驚かれるらしい。給料はものすごくいいけど労働は地獄という話だ。

 佐川で六ヶ月持てばどこに行っても通用するという。おそらく地球上のどこであろうと。シベリアの収容所だろうとアブグレイブ刑務所だろうとどこだろうと。一度行って見たいなあ。借金返済という理由だけで集まった男達の世界。リアルカイジみたいな感じだろうか。